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陽子線治療とは

陽子線治療はがん治療の一種

陽子線治療とはがん治療の一種で世界的に注目を集めている最新の治療法です。特殊な装置で陽子という水素の原子核をたくさん作り、それを加速させエネルギーを高めることで、がん細胞を破壊する陽子線ビームを作り出します。この陽子線ビームをがん病巣にぶつけ、細胞の設計図であるDNAを破壊し、がん細胞を死滅させるのが陽子線治療の仕組みです。陽子線治療の優れた点は外科手術や従来の放射線治療(X線)では治すことが難しかった種類のがんを治療できる点と、正常な細胞へのダメージが少なく副作用や後遺症を最小限に抑えられる点です。

  • 正常細胞へのダメージが最小限に抑えられ身体的負担が少ない

  • 放射線の影響を受けやすい器官の周辺にあるがんにも照射可能

  • 従来の放射線治療では生き残ってしまうがんも死滅可能

  • 外来(通院)での治療が可能

  • 身体への負担が少なく高齢者や体力が低下した方も治療可能

  • 治療後、社会復帰や日常生活への支障が少なくQOL(生活の質)を保つことが可能

陽子線治療は副作用が少ない

陽子線治療は従来のX線治療に比べ約半分の被ばく量で同等の治療効果を期待できます。従来のX線を用いた放射線治療に副作用が生じるのは、病巣以外の正常な部分にも放射線が当たるためです。これは「体の表面近くで一番強いエネルギーを放ち、体内へ入るに従ってエネルギーは減少し病巣を越えて体を突き抜ける」というX線の性質によるものです。これに対し陽子線は、あらかじめ設定した深さに達したときに最大(ブラッグピーク)のエネルギーを放出して停止する性質を持っているため、がん腫瘍に対してピンポイントに影響し正常な細胞へのダメージを抑えることができます。

陽子線治療装置

陽子線治療装置は陽子を加速させるサイクロトロン(円形加速器)、陽子線を照射するガントリー、そしてそれらを繋ぎ陽子線を運ぶビームラインの3つの装置で構成されています。サイクロトロンは水素の原子核である陽子を光速の70%程度まで加速しますが、これは1秒間に地球を4周する速さに相当します。陽子線治療を安全に行うには陽子線を安定供給することが不可欠なため、サイクロトロンの状態は常にモニターで監視、制御しています。治療に必要なエネルギーを持つまでに加速させた陽子線はビームラインを通り照射を行う治療室へ運ばれ、病巣の状態に合わせて整形されます。そしてガントリーから照射された陽子線はがん病巣に達します。当院は360度あらゆる角度から照射可能な回転ガントリー照射装置を用いて陽子線治療を行います。

2種類の陽子線照射法

当院の陽子線治療は陽子線の出口部分にユニバーサルノズルという構造を採用することで、がんに合わせて2つの照射法(拡大ビーム法とスキャニング法)を使い分けることができます。

拡大ビーム法(ワブラー法)

肺がん、肝臓がんなど呼吸によりがん腫瘍の位置が動くことが予想される場合は「拡大ビーム法(ワブラー法)」で治療を行います。照射室まで運ばれてきたビームをがん病巣の厚さや平面的形状、奥行きなどに合わせて拡大、調整し照射する方法です。治療計画段階で設定した位置でビームが止まるため、がん病巣の奥にある正常な細胞を傷つけずに治療できます。(動画はこちら

スキャニング法

前立腺がん、頭頸部がんといった動きが少ない腫瘍や、より精密な陽子線治療が必要な腫瘍に対しては「スキャニング法」を用いて治療します。このスキャニング法は、細い陽子線ビームでがん腫瘍を「塗りつぶす」ように照射する手法です。拡大ビーム法と比較して複雑な形のがん腫瘍でも形状に合わせて照射できるため、周囲の正常細胞への照射線量を更に抑えることができます。スポットスキャニング法とラインスキャニング法があり、当院ではラインスキャニング法を採用しています。(動画はこちら

高精度な画像誘導陽子線治療

当院では2台のCT(インルームCTとコーンビームCT)による高精度な画像誘導陽子線治療を行っています。陽子線治療は、陽子線を照射したい腫瘍や周囲にある臓器が治療計画通りかどうかを常に確認することが重要になります。この腫瘍や周囲の臓器の形状や位置を画像で確認しながら照射位置精度を向上させる手法を画像誘導放射線治療(IGRT:Image Guided Radiation Therapy)と呼びます。当院の陽子線治療では通常行われているX線写真による位置確認に加え2種類のCTによる診断も同時に行い、より正確な確認を実現しています。診断用で使われる大口径CT、インルームCTは高精度な画像を撮ることができます。撮像の際は患者さんを乗せたロボット寝台が陽子線ガントリーからインルームCTの前に患者さんを運び、CTが動きながら撮像します。もう一方のコンビームCTは陽子線ガントリー内部に取り付けられており、短時間での撮像が可能です。これら2つのCTを駆使することで陽子線治療に代表される粒子線治療の弱点である「臓器や腫瘍の変動」に対して素早く的確に対応し、より適切な治療を提供するアダプティブ陽子線治療(適応陽子線治療)を実施します。

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